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口腔ケアについて ~高齢者の口の中~

      2016/06/29

みなさん、こんちは。

今回は高齢者の中の口に中についてお話をします。

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「最近、食事が食べられなくなった」と介護士から相談がありました。様々な可能性を探るため、歯科医師の診察を受けることにしました。家の中はなんともいえない匂いが充満しており、口の中をのぞくとそこにはあらゆる高齢者の口の中のトラブルが標本のように存在していました。

 

麻痺側の頬の内側や歯にべったりと付着した食べ物。食べかすや歯垢の中からは、歯周病でぐらぐらになった歯がまばらに見えていました。医師によって汚れをざっと取り除くと、虫歯で歯冠部が溶けてしまい、朽ちた歯の根っこが歯肉に埋まっているのが見えます。本来はピンクのはずの上あごや頬の内側の粘膜は、細菌や粘膜の上皮が塗り壁のように覆い、しなやかな動きを邪魔していました。この方が食べられなくなった原因は、しっかりと噛める歯がないだけではなく、舌や頬の内側が汚れでかたくなり、物をかんだり飲み込んだりすることができなくなっていたのです。

 

このような例は決して珍しくありません。在宅の介護を必要とする高齢者のほとんどが、歯科治療の必要があるにも関わらず、歯科医を受診するのは少ないのです。熱心に介護をしている家族ですから、口腔ケアは本人に任せたり、介護の一番あと回しになってくるのです。特に本人が口腔ケアを拒むような場合は、介護のプロである介護士や看護師、歯科衛生士でも、口の中という極めてプライベートなところだけに、のぞきにくいものです。こうして、高齢者の口の中は、家族もプロもなかなか見ることができない、厄介な部分なのです。

 

最近は訪問歯科診療が広がり、在宅で介護を必要とする高齢者の口の中にも日が当たってきました。多くは「入れ歯が壊れた」「歯が抜けてしまった」といった決定的なことが受診のきっかけです。本来は早めに受診し、治療するのが理想的ですが、現実は食べづらくても、入れ歯が合わなくても、多少のことなら我慢してしまう傾向にあるようです。しかし、恐ろしいのは、高齢者が我慢している間に体力が低下して、食べる、話すという口の機能が衰えていくことなのです。

 

口腔ケアを早く始めることが大切ですが、手遅れということはありません。無表情だった方が、口の中の状態が改善されて「食事が美味しくなった」と笑顔見せることもあります。寝たきりで、反応が無い方も口の中をきれいにすることで、粘膜がピンクによみがえり、誤嚥性肺炎を予防することもできます。このように、口腔ケアは単に口の中をきれいにするためだけではなく、生活の質まで改善することができるのです。

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