介護のヘルプ|介護士目線の介護現場

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移動の介護

   

みなさん、こんちは。

今回は移動の介護について解説をしていきます。

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一般的に移動というと、ある地点から別のある地点へと位置が動くことを差しますが、ここでいう移動動作とは例えば仰向けに寝た姿勢から右向きになることのように、身体の重心が距離に関係なく動くことを差します。つまり寝返りをうつことも移動動作のひとつなのです。移動は何の目的もないのに行なわれることはありません。何かをするために移動動作を繰り返すのです。寝返りをうつことも、身体の一部が圧迫されることによって苦痛を回避するために行なわれます。私達が夜間、睡眠をとっているときでも、布団に入ったときから全く動かずに朝になることはないでしょう。同じ姿勢、体位が苦痛であれば無意識であっても楽な体位へと移動しているのです。

 

このように、日常生活動作のすべてにおいて、移動動作は欠かせません。食事をする、排泄をする、入浴をする、更衣する、洗濯・掃除・調理などすべての生活動作を実施するために移動しています。移動動作を制限されることが、日常生活動作の支障となります。また、休憩や睡眠以外は、横になって行なう動作はありません。どんなに疲れていても、寝たまま食事や排泄をすることはないのです。これは、身体のさまざまな仕組みから、食事の姿勢は食事を安全かつ安楽に摂取するために適切な姿勢、排泄の姿勢は排泄に最適な姿勢であるからなのです。姿勢や体位とその一連の動作が日常生活動作そのものであるといえます。

 

移動動作が困難になった場合、その程度によって、さまざまな日常生活動作の実施が困難になってしまいます。「摂食動作はできるけど、自分の座れない」「トイレに座れば排泄できるけど、自分でトイレに行けない」など、移動動作ができないことで、さまざまな日常生活を自分ひとりで実施することが難しくなります。しかし、移動動作が困難にしている多くの原因は、動けない環境にあります。例えば、ベッドが柔らかすぎる場合、寝返りや起き上がりはますます難しくなります。床ずれ予防のためのエアーマットなどは、手や足の機能障害がない人にとっても起き上がりにくいものです。何とか自分で起き上がっていた人も、エアーマットに寝かされれば、起き上がりはおろか、身動きもできなくなってしまいます。エアーマットが本当に必要な場合と、逆に動きにくくなることがあり、安易に使用すると寝たきりになってしまうのです。また、今まで這って動いていた人に、ベッドの方が便利だからと、ベッドに寝かされて一歩も動けなく場合もあるのです。

 

このように、身体が原因で動けなくなるのではなく、環境で寝たきりになる場合があることを理解しておく必要があります。

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